2014年種まき
2014.05.17
震災後すぐに始まった東北コットンプロジェクトは、4年目を迎えました。
今年も荒浜、名取、東松島で、綿花栽培がはじまりました。何もないところに種をまいた最初の頃とは違い、農業が再開し、生産農家さんたちも米や他の作物とともに、綿花を育てています。
昨年、試験的に始めたビニールハウス栽培でかなり効果があがった名取農場では、今年はハウス栽培を増やすほか、畑でもまき時、植える間隔、雑草対策などさまざまな工夫をして収穫の増加をめざしています。
4月からハウス内で苗を育て、5月上旬には畑へ移植、5月中旬にお邪魔したときにはすでに根付き育っている光景がひろがっていました。温度を確保するために透明なマルチフィルムがかけられ、畝の間には他の雑草を抑えるため麦をまくなど、自然を生かした雑草害虫対策が施されています。枝が重なって発育が悪くなったり、草取りの作業効率をよくするため畝・株の間隔はたっぷりとられています。ペットボトルで苗を保護するなど、綿花担当の佐々木さんがとても手をかけて育ててくれています。
「今のところ去年よりよく育っています。今年はエルニーニョが来て冷夏だというのがちょっと心配ですが」という佐々木さん、ブログ「耕谷アグリの農作業日記」で綿花や他の作物の栽培の様子をアップしているので、ぜひ読んでみてくださいね。
昨年初めて綿花を植えた東松島農場では、今年もプロジェクトチームやボランティアが参加して種まきが行われました。
山を切り開いた農場は、山の土だけに水はけが悪く、乾けばカラカラに乾燥し、肥料分もないという状態だったので、今年は畑を作り直したそうです。まず、排水対策として縦に1本、横に3本排水路を設けました。ブルドーザーを入れて耕し、肥料も施したとのこと。今年から少し離れた美里町のビニールハウス2棟でも栽培をはじめました。綿花担当の菅原さんは、「昨年とは全く違います。ただしそれが収穫に結びつくかわかりません。毎年がチャレンジですね」と話します。
プロジェクトチームも参加した種まき当日は晴天にめぐまれましたが、種まき予定日の3日前に大雨が降り、急遽前夜にもう1本排水路を掘るなど、直前まで準備に追われていました。畑は水が残って想像以上にぬかるんだ状態。1回足を踏み入れるとズブズブと沈んでいきます。長靴のない人たちは靴を脱ぎ、裸足で種まきを行いました。水が抜けずに種がまけない場所もあり、種まきは午前中で終了。農家さんや近所の方が朝取れ立てのタケノコやお餅を焼いてふるまってくれました。こんな交流も楽しみのひとつですね。6月には間引きと草取りを行います。
荒浜農場は、新しい会社「荒浜アグリパートナーズ」が本格的に始動し、いよいよ本格的に農業生産が始まりました。水田が広がり、農機具やビニールハウスが並ぶ光景は、まさに農業再生の姿です。今年田植えをした8ヘクタールの田んぼは、8割が震災以降初めての作付けで、耕すとまだがれきや石が出てきたそうです。綿花担当の松木さんは「会社となって、地域の農業を支える立場になることができました。これからが正念場です」と話します。綿花は荒浜復興の象徴として、できる範囲で栽培していくとのことで、面積も40アールと小さくなりました。種まきは、田植えの時期と重なるため多くの人を受け入れる体制をとるのが難しく、今年は特に人を募集せず行きたい人だけが参加ということになりましたが、当日になってみるとやはり大勢のチームメンバー、ボランティアがやってきました。
綿花は、荒浜アグリのすぐ近くの畑と、少し離れた海に近い場所2ヶ所で育てます。これまで種を深くにまきすぎて芽が出なかったり根腐れしてしまったこともあり「浅く、種の上にパラパラと土をかけるくらいで」と、大正紡績・近藤さんが指導。今年から早く成長する早生(わせ)種の綿花を育てることになり、梅雨や秋の長雨、低温に負けずに実ってくれることを期待しています。
荒浜アグリパートナーズ代表の渡邉さんは、「綿花はみなさんに参加してもらって育てたい。いつでも来て手伝ってください」と言います。種まきから1、2ヶ月、増殖する雑草取りが綿花の成長を左右します。3年前とは景色も違い、復興に向けて進んでいる沿岸部のようすを見に行きがてら綿花畑に行くというのも、農家さんを応援するひとつのかたちかもしれませんね。