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リー・ジャパン 取締役/ディレクター 細川 秀和 さん

長期的な、サスティナブルな支援につながる

私どもはジーンズメーカーで、全製品に占める綿の割合がとても高い業種です。実はジーンズは、染色や加工の工程で薬品や水を大量に使うため、環境負荷が多いんですね。そこで素材である綿は、なるべくオーガニックのものにしたいということで、5年ほど前からオーガニックコットンに携わってきました。世界各国の綿畑に行き、大正紡績の近藤部長と密な関係を築き、綿栽培の技術的な話もさせてもらっていたので、この話を聞いたときは、すぐにやろうと決心しました。

震災復興支援を考えたとき、衣食住という3つの柱があるとするならば、食・住は、まず物資や仮設住宅の提供、次の段階では流通網や店舗、住宅地の整備など、形になりやすいですよね。しかし衣というのは、まず靴下や下着など、物品を送ることはしました。ただ、次に何をすべきなのか。何か違う形の貢献が出来ないか、と考えているときに、綿を作るプランを聞き、これは衣料品をただ現地に送ることだけじゃなくて、ある程度雇用を生み出す、長期的な、サスティナブルな支援につながることだなと思い、我々が立ち上がったというわけです。

綿を農産物として一から育成し、物作りを実現していくのが目標です。

当初から話しているのですが、小学校の社会科の教科書で、宮城県の荒浜地区に綿のマークがつく、というのが私の夢です。綿を農産物として一から育成し、物作りを実現していくのが目標です。今は支援活動という側面だけが注目され、報道もそこに集中していますが、長期的な産地化をめざしていることを伝えていきたいですね。

収穫した綿は、しばらくは参加企業が一定の価格で買い取りますが、将来的には企業毎に好きに買い付け、物が悪ければ買わない。値段が高いだけでクオリティが低いのであれば、いずれ復興支援という鎖がとれたときにみんな買わなくなっていくので。そのために農家さんには、値段に見合う、いい物作りを心がけてもらう。もちろん彼らはプロなので、心配は一切していません。

荒浜地区の綿の生育に関しては、津波による塩害、砂地化や、日照時間、積算温度が足りないなどの課題はありましたが、ここからは研究で、来年以降改善していく予定です。綿は、気候に対する順応性は、実は高いのです。世界各国、それこそ赤道直下から、新疆ウイグル地区から、南米ペルーから、様々な場所で栽培されていますから。アメリカの主要生産地であるテキサスは砂漠で、昼夜の寒暖差が非常に激しいところです。日本でも降水量が多い奈良県で栽培されていますが収穫も順調です。綿は、世界中で衣服になるように、神様が与えてくれた植物なわけですから。種としては強いんですよ。

コットンが繋いだ絆が輪になって、一つのゴールを目指し、そこから生み出されるものがある。

このプロジェクトは、たくさんの企業が参加しているというのが、結局ポイントなんでしょうね。コンペをして参画企業を選ぶというような方式でなく、賛同した同業他社も、異業種も同じチームに入って、みんながいろんな情報を持ち寄って、将来の農業を作っていこうとしている。コットンが繋いだ絆が輪になって、ひとつのゴールを目指し、そこから生み出されるものがある。その産物を、我々だけで独占するのではなく、外に出して、他の方たちとも共有できれば、すごい力になるはずです。そのひとつとして、農業系の高校生や大学生に東北コットンの話をしに行っています。こういった情報に触れることで、将来の農業のあり方を考えたり、農業に携わりたいと思う若者が増えてくれれば、本当にうれしいと思います。

(2011年11月22日)