活動レポート東北コットンプロジェクトの活動レポートです。

中学校体験学習

2012.07.26

綿栽培が2年目を迎え、このプロジェクトが地域に少しずつ知られるようになってきました。
生産者としてチームに加わった宮城県農業高校をはじめ、近隣の小中学校との交流が広がっています。
そのなかのひとつ、仙台市立南吉成中学校の交流授業を取材しました。

南吉成中学校は、仙台市の西北、泉ケ岳などを臨む一画に新しく宅地開発された地区にあります。1992年、仙台市立学校の61番目にできた、新しい学校です。震災により、地割れや地盤の傾きで、プールや校庭の一部、テニスコートなどが使えなくなりましたが、甚大な被害は受けなかったそうです。同じ仙台市でも、沿岸部の津波被害についてあまり知る機会はなかったとのことでした。

そんななか、今年沿岸部から赴任した先生が荒浜の種蒔きに参加したことなどをきっかけに、町場の子にも沿岸部の様子を知ってほしいとの思いから、「被災農家弟子入り体験」というプログラムが中学1年生の授業として組まれました。まず7月18日、学校の体育館で教育講演会「地震・津波の体験談と農業再生・復興への道のり」が行われ、綿の花生産組合の渡邉静男さんが講演しました。

「縁あって校長先生から昨年の津波被害の後に行っている綿花栽培のことをお友達に伝えてほしい、という依頼があり、できるだけありのまま伝えようとやってきました」と話し始めた渡邊さん。地震の後、家族や知人を避難させるために走ったこと、避難した荒浜小学校めがけて真っ黒い津波が押し寄せてきたこと、全員で4階に避難、流されていく家や人を目の前にしてもどうすることもできなかったこと、自衛隊のヘリコプターが救助のために何度も往復したこと、翌日残った人たちが消防ホースにつかまりながら2時間かけて別の中学校に歩いて避難したことなどを、静かに伝えました。

後から渡邊さんは「前列の生徒が泣き始めたから、つられてしまって」と言っていましたが、声を詰まらせながらの話を、生徒たちは身動き一つすることなく聞いていました。映像で、2年前と震災後の荒浜の様子や、綿花栽培の経過が流されましたが、食い入るように見つめていました。

その真剣な様子は、生徒からの意見や質問にも現れていました。

「津波によって風景がかなり変わってしまいましたが、その様子を見て最初にどう思われましたか?」「このような状況になり、心の支えとなるものはなにかありますか?」「綿花栽培のお話がなかったらどうしていたかと思いますか?」「今の映像を見て、私たちはまだ幸せなんだと思いました」「綿は津波が来た土地でも、台風の影響で数日間水に浸かってしまっても、生き抜くことができる強い花だということが分かりました」「震災で大変な思いをした人がいっぱいいると思います。綿が一人一人の希望になればいいと思いました」等、会場から次々に手があがり、自分の言葉で語るようすは、この講演が子どもたちの心に強く残ったことを感じさせました。

翌週26日には、荒浜の綿畑に行っての草取り体験です。

バスで荒浜小学校の前まで行き、そこから海まで歩いて、講演で聞いた被災の状況を体感。建物が流され土台だけ残った土地、津波が超えたという12メートルの高さの松の木、130キロ先で津波が発生したという海、それらを目の当たりにして、神妙な顔つきの生徒たちでした。

綿の見分け方、草取りのやり方の説明を受けて、畑に入ると…….子どもに戻っていました! 黙々と草取りに没頭する子がいれば、コオロギをつかまえるのに夢中な子、土いじりをして、そのうち投げ合いがはじまった男子たち、誘い合って水を飲みに行く女子グループなど、子どもならではのマイペースさです。話はまじめに聞くし、あいさつもきっちりしていて、ずいぶんと大人びた真面目な生徒という印象がありましたが、半年前までは小学生、まだまだ子どものようです。引率の先生は「震災の時は小学5年生の子たち。復興や防災についての意識を持って、少しずつ変わる姿が見られればいいんですけどね」とのこと。話を聞くと、草取りはしたことないし、土に触ったり虫を探すこともほとんどない、という環境の子たちなんですね。広い畑でのびのびと開放的になっているのは、むしろほほえましい姿でした。

生産農家さんたちにとっては、孫くらいの子どもたち。熱中症にならないか、怪我しないかと心配していました。やさしく教えてあげたり、話をしたりするうちに、子どもたちもすっかりなじんでいるようす。草取り以上に、お互い交流することが大きな収穫だったのではないでしょうか。

この日は梅雨明けで蒸し暑く、丸1日の作業は中1の子には大変だったかもしれませんが、ほぼ全員がバテずに参加、がんばりました。最後、「これからも役に立てることがあるなら、率先して、僕たちが中心になってやっていきたいと思います」と力強く挨拶していました。

「花が咲いて、白い綿花が実る頃、また来てください」と農家さん。一緒に収穫を喜びたいですね!