2013.02.14
2月14日、宮城県農業高校の綿花贈呈式が行われました。
宮城県農業高等学校、通称「宮農」は、綿花栽培支援でチームに参加しています。「それぞれの思い」でも紹介している阿部由先生率いる3年2組がクラス単位で栽培に取り組み、「一人一鉢プロジェクト」として学校内で綿花を育ててきました。綿花は見事に実り、約2kgを収穫。その成果の目録とともに、先生と生徒さんが東京の事務局まで目録の贈呈に訪れてくれたのです。
宮城県農業高校は、明治時代に農学校として設立した由緒ある学校です。1977年から名取市の広浦に校舎がありましたが、東日本大震災で甚大な津波被害を受けました。現在は同市の農業大学校内の仮設校舎に移転しています。現在の3年生は、1年生の終わりに被災し、新学期は5月から、9月に仮設校舎に移り、2年間を過ごしました。解体される元の校舎に通い、学校で震災を経験した、最後の学年です。
彼らはこの春高校を卒業します。高校生活最後の1年、チームの一員として綿花に取り組んでくれた彼らの活動を、振り返ってみました。
宮農が最初にプロジェクトに参加したのは、名取圃場の種まきでした。高校の農業クラブの集まりを通して、宮農の川口友和先生を紹介いただいたのが きっかけだったとか。名取に来たのは、川口先生と農業クラブの生徒たちでした。名取の耕谷アグリサービスは、元の宮農の広浦校舎がすぐ近く。代表の佐藤さんはじめ宮農OBが多く、ご縁があったのかもしれませんね。
その報告を聞いた阿部先生が、担任を受け持つクラス全体で取り組みたい、と提案しました。先生は、青年海外協力隊でアフリカのマラウイという国で2年間農業指導をした経験から、「与えるということは実は自分がハッピーになる」と感じ、3年2組のクラス目標も、「豊かさとは何かをどれだけ得るのではなく、どれだけ与えられるかで決まる」。被災者として支援される立場だが、できることを地域の方に貢献することで、それを学んでほしいという思いからプロジェクトへの参加を決めたと言います。
学校での栽培は、6月4日の播種からスタートしました。荒浜、名取と同じ環境にするため、被災した元の広浦校舎圃場から土を採ってきて分析、同じ条件の培養土を使用。培養土の種類や、直まき・ポット移植による生育の違いの観察など、さすが農業高校、本格的です。7月に校舎に見に行ったときは、バックカルチャー(袋栽培)に定植したところでしたが、立派に育っていて驚きました。
校内だけでなく、学校外での活動も活発です。荒浜の播種作業や草取りには有志の生徒が。交通手段がない場所なので、自転車で行った、という子もいました。「家が被災してボランティアの人が来てくれて、自分でもやってみたいと思ってました」「作業は大変で愚痴ったりしたけど、そんなことを言っているボランティアの人は全然いなかった。他人でも、団結すればこういうことができるんだな、と感じました」「最初は面倒だと思ったけど参加するにつれ楽しくなった。最初からやればよかったと後悔しました」など、ボランティアは大きな経験となったようです。製品発表イベントでは、ランウエイにモデルとして登場、「収穫したコットンを被災地の人に使ってほしい」と力強くあいさつしていたのが印象的でした。
3年2組の活動だけに留まらず、他学年やさまざまな形で、プロジェクトとの関わりも広がってきました。夏休みには農業園芸科1年生の夏期実習の一環 として、120名が除草作業に参加。10月の名取の収穫感謝祭では、白石喜久夫校長先生率いる太鼓愛好会が、迫力ある復興太鼓を披露してくれました。クラスから学校へ、思いが広がっています。
12月には、いよいよ収穫です。サイズも大きく立派なコットンが見事に実りました。教室には模造紙にまとめられたこれまでの記録が何枚も貼られていましたが、みんなの努力の経過が、この立派な綿花になったんですね!
コットンは、箱詰めして大阪の大正紡績に送られました。宮農コットンは、荒浜、名取で収穫された綿とともに紡績、商品化されて、「東北コットンプロジェクト」のタグがついた製品として販売されます。
贈呈式では、出席した生徒全員が、感想を述べてくれました。
「震災で大変な思いをしたけど、復興を少しでもできればいいと思っていたので、恩返しできました」
「3年2組だけでなく、1,2年生も手伝ってくれて、宮農全体で取り組めました」
「以前よりクラスの雰囲気がよくなった。若いうちから広い範囲で行われているプロジェクトに参加できてよかったです」
「活動に取り組んで、「豊かさは与えること」というクラス目標に少し近づけたかな、と思います」
「コットンが消費者にどうやって届いているのかわかって、勉強になりました」
「余った種をもらって家で育ててみました。学校では全部用意されていたけれど、もちろん一から自分でやらなければならず、自分の知らないところで他の人が協力してくれてるんだな、と実感しました」
「いろいろな人と出会い、貴重な経験ができました。これを社会で生かしていきたいと思います」
「ボランティアではいろんな人に感謝されるし、自分もいい気持ちになるし、いいものだなと実感しました。これからも機会があったらたくさん参加したいです」
自分の言葉で話すみんなは、本当にいい顔でした。
彼らから贈られた目録には、綿花のほかに、「三年二組三十四名の思いと願い」と、ありました。しっかりと受け止め、いい製品に、そして今後の活動につなげていくのが大人の役目ですね!